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バーレは周辺諸国とは特殊な文化と宗教を持っている国である。
他文化の入り混じった独特の雰囲気、それでありながら周辺諸国と違い独自の唯一神たる『トラウゴッド』を崇拝する宗教を国教とし、その教えを忠実に守る事で民族が違えど国の安定の平安が守られている国だ。
ちなみに『トラウゴッド』と呼んではいるがそれは神の名前ではない。
神の真の名前は軽々しく口にする事は不敬とされる為で信者達は敬意を込めて『創造主にして忠節なる神』と呼んでいる。
エマヌエーレがバーレの歴史文化を学んで得た知識の一つだ。
エマヌエーレはエステル王女を少しでも知るきっかけになればと思って時間があればバーレの歴史書を読み、そしてバーレの都市を歩きその文化や宗教観を肌で感じ取ろうとした。
特にこのバーレ王家とトラウゴット教は密接な関係があると学んでいたため、その日は一番大きいと言われるフラウエン教会へと足を向ける。
「ようこそ、エマヌエーレ殿下、司祭長のヨアヒムと申します」
教会入口で出迎えてくれたヨアヒムと名乗る、五十代くらいの黒髪黒目で細身の体躯、位の高そうな白の司祭服を身につけている男は深々とエマヌエーレに頭を下げる。
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