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「自首を、します。」
どんどん出てくる物騒な言葉たちが耳をつんざいて、私はもうここに立っているのがやっとだった。
自首、と言うのは、犯した罪を申し出ること。
この人の犯した罪は、___私を誘拐したこと…?
『いやもう、ほんと…何が何だか…、』
「いつ私は捕まるのだろう、って、毎日怯えなかった日はないから、それが今日で良かった。」
『怯えって…そんな、馬鹿なことするからじゃん!良かったって何よ!捕まるのが嫌なら誘拐なんて…』
「私が捕まったら…この子を1人にしてしまう、この子は…虐待をしていた本当のご両親の元へ帰ることになるし、私はもう2度とそれを止められない。それが怖かった。」
なんだ、それ。
悪人だと吐くなら責めて、最後まで悪い人でいてよ。
「だから、貴女が1人でどこにでも行けるほど、…大きくなってからで良かった。」
じゃないと私は、何のせいにも出来ぬまま、怒りや恐怖をどこにもつぶけられぬままじゃないか。
2人分の荒い呼吸がひゅうひゅうと響くリビング。
立ち向かうことも、かと言って逃げ出すことも出来ないのなら、判断する術はない。
『ねえ、今までの、ぜんぶ、…何だったって言うの?』
「傷付けてしまってごめんなさい。ごめんなさい。私のエゴに付き合わせてごめんなさい。」
なんて愚かなのだろう、なんて滑稽なのだろう。
「ごめんなさい…。」
母と思っていた人物は、最後まで謝ることしかしなかった。
涙しながら叫ぶように絞り出すその声は、紙を破るような掠れたものになっていた。
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