過去化粧

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*** キャンパスにはいつも通り大勢の人がいて、しかし今の私には目まぐるしく酔ってしまいそうだった。 「…休むん珍しいやん。」 夏樹は神妙な面持ちで私を待ち構えていた。 苛立っているのだろう、眉間がグンと曇っており、手のひらがパタパタと遊んでいる。 呼び出したのは私。 『うん…急に、ごめん。』 考える前に口が勝手に謝って、頭を床に擦り付ける母を思い出した。 こんな時なのに、あの人の言った「貴女がどこへでも1人でいけるようになった」が身を鳴らす。 それでも、決断はしなくてはならなくて、自分で選ばねばならない。 選ぶことは、何かを捨てること。 決めてしまった私は、もう動くしかなかった。 いつもなら競り合いながら馬鹿を言い合う関係性のなか、私はようやく口を開く。 『私、出てくんだ。』 「え?」 びゅうと2人の身体を風が抜けて、燃え上がった心を冷やしてゆく。 いよいよ本格的に夏が来るのだと思わせる夏嵐に、来週から始まる夏休みを思った。 『だからもう会わない、会えない。』 海もバーベキューも、全部夏樹とするはずだった。 しかしそれらもう、全て叶わぬ未来。
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