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「…どういうこと?おかしいやん、あの話してから、そんな…。」
あの話、を原因という夏樹は、合っているようで間違っていた。
これは私の問題だ。
「ユナ…?」
そんな、縋るような目でこちらを見ないで欲しい。
どうしても、揺らぐから。
夏樹は、私の大切な人だから。
『大切な生活を、壊さないでいて。』
でもそれ以上に、母が大切な人だから。
私は母を選んだんだ。
夏樹を、救ってくれた人を、昔も今も大切な友人を、捨てるんだ。
今日の道には今日のたんぽぽが咲く。
昨日までの私ではもういられないのだとすれば、新しく咲かなければならない。
「俺との日々は、…無かったことになるん?」
それがどんなに酷い選択だとしても。
「俺はずっと会いたかった。ユナに会いたかったし…、会いたかったけど…。それがなんで梨沙子と離れることになるねん。」
『今日から私は、貴方とは他人。友だちなんかじゃなかった。』
ここで泣くのは簡単だ。
だってこんなにも悲しい。
しかし、一度泣いて仕舞えば、夏樹に押し付けがましく助けを求める私になってしまう。
「なんで俺は何度も…、大切な友達を失うことになるん…。」
そう思ったら、涙を流すことは出来なかったし、弱さも恐怖も、見せるわけにはいかなかった。
『何も無かったんだよ。』
まるで胸が空洞になったよう。
そこからどんどんと言いようのな悲しさで浸されてゆく。
『ごめん。』
日本中が快晴に美しさを見出す今日の日、私と夏樹の間にだけ、私が故意に入れた亀裂が稲妻のように走る。
このチープな見た目をした謝罪が、夏樹と交わした最後の言葉だ。
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