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『や、違うよね?普通に学校だって通ってたし、今だってこうして…』
母に問う言葉たちが、全て自分に言い聞かせるものになる。
そんなわけない、そんなわけない、と母の告白に粗を探した。
たどたどしい敬語も並ぶ言葉たちも、全てが、チープな感動映画の台詞みたいで。
その意味を理解するのは、容易くない。
しかし、この否定は無意味なのだと、ゆっくりと頭を上げた母を見て分かってしまった。
私の足元で顔を上げた時の、母の目はそれはもう恐ろしいほどに血走っていて。
…化け物のようだったから。
こんなのを人とは呼べない、自分とは違う、ナニカ。
だからこそ、母が言う、誘拐の2文字に真実味が増していくのを、もう止める事は出来ない。
『…話して。』
ゾワゾワと沸き立つ恐怖感を押さえつけるように無理やり呼吸をし、震える声で問う。
すると、1度伏せたまつ毛がグンと持ち上がって、血走った母の目が私の視線を捕まえた。
私が意を決したように、きっと母も覚悟したのだ。
床に手を着いたままの母の、静かなで独白が始まった。
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