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「天使さんは、知ってるのね」
「……知らないよ」
「うそ」
「……うん、ごめん」
素直に謝って、天使さんは黙った。答えたくないのだ。私はそれと察して、寝転んだまま天使さんの手を握った。
「私が、知っちゃいけないこと?」
「きみは知る権利がある。……でも」
「ん?」
「でも、知らずにいて欲しい」
それは、切実な言葉だった。囁く声は吐息に揺れて、掠れて、痛々しい響きをしていた。私はくすりとする。
「わかったよ」
「えっ?」
「あたしは知らずにいる。それが天使さんの願いなんでしょ」
天使さんは小さく息を飲んだ。苦笑にも似た吐息をこぼして、うん、と答える。
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