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その猫の背を軽く掻いてやりながら、僕はため息をついた。
「僕はね、人々の魂を優しく包み、ゆくべき場所へ導いて差し上げる高潔な仕事、をやってみたかったんだよ」
「たはは、そりゃ、ホームページにはそう書いてあるだろうな。んなおキレイな仕事なもんか」
「やっと君たちの『なにがなんでもやめておけ』の意味がわかった気がする」
「お前さんみたいな真面目で優しいようなやつにゃ、堪えるだろう」
「そういうんじゃないけど……」
もごもごと異議を唱えると、猫越しの声はまた笑った。
「ま、泣いても笑ってもあと三日だ。無理せず頑張りなされ」
「うん……ありがとう」
おやすみを交わして、通話を切る。猫は仕事は済んだとばかりに、夜道へと駆け出して行った。手を振り見送って、小さくため息をつく。抱えた膝に顔を伏せた。
「あと三日──か」
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