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第一章『コロッケ』
「あっ、マサも今帰り?一緒に帰ろ」
マサが振り向くとリナが立っていた。
「おう、お前の所も休みなのか?」
「うん、昨日試合だったしね」
リナの所属する空手部とマサの所属する柔道部は共に昨日対外試合だった為、今日の部活は休みとなっていた。
「他の奴らは?」
リナと並んで歩き出しながらマサが聞いた。
「ナオとトモは部活で、タカとレナは調べ物があるから図書室に寄って帰るってさ」
「ふ~ん、そっか。にしても腹減ったなぁ」
自分で聞いておきながらたいして興味も示さず、空腹との戦いを始めるマサ。
「今日の夕飯は何かなぁ」
マサの思考は100%夕飯に。
その様子を呆れながら見ていたリナがふと視線を上に。
「ねぇ、マサ。ちょっと上見て」
一人夕飯の思考に耽っていたマサだったが、リナの言葉に上を見上げる。
「ありゃあ、こりゃ一雨くるかもな」
二人が歩いている間にいつの間にか雲行きが怪しくなってきていた。
「天気予報では雨降るなんていってなかったのに。どうする?走って帰る?」
「んなの嫌に決まってるだろ。どっかで雨宿りして帰ろうぜ」
パラパラパラパラ
マサの言葉を合図としたかのように雨が降り始める。
「ヤバッ、降り出したな。・・・あっ、そうだ。近くに俺の行き付けあるからそこ行こうぜ」
マサに案内されてリナはとあるお店へ。
「お肉屋さん?」
「ここめっちゃ美味いんだぜ」
マサはそう言うと店内へ・・・入らず通り過ぎて行く。
「えっ、中入らないの?」
「あぁ、こっちだ」
リナがマサに付いて行くと店頭販売をしている場所が。
そこには屋根付きの飲食スペースも設置してある。
「おばちゃん、いる?」
「あら、マサ君。いらっしゃい」
「あっ、おばちゃん。コロッケ買うからちょっと雨宿りさせて」
「えぇ、もちろんいいわよ」
「じゃあ、コロッケとハムカツね」
マサがおばちゃんに注文する。
「おごってくれるの?やった!」
「えっ、お前も食うの?」
「だって2個注文してるじゃん。てっきり私の分かと」
「いや、俺の分だし。・・・ったく、しょうがねぇな。コロッケでいいか?」
「やった。さすが、マサ。太っ腹」
マサのお腹を叩く。
「おごるのやめるぞ?」
「ゴメン、ゴメン」
リナが素直に謝ると、マサは追加注文。
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