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「おばちゃん、コロッケ一個追加で」
「あいよ。新しい彼女かい?前の子とは違って活発そうだね」
「そんなんじゃねぇよ。てか、いつの話してんだよ」
マサは罰が悪そうな表情。
「えっ、マサ彼女いたの?」
リナも知らない衝撃情報。
ザーッ
雨が本格的に降り始めた。
すごい夕立だ。
リナの言葉は雨に打ち消されたらしい。
「はい、お待たせ。ゆっくりしてってね」
「あんがと」
おばちゃんから受け取ったコロッケを1個リナに
渡す。
「ありがとう」
二人は飲食スペースの一角に陣取る。
「ん~、美味しい」
「だろ?ここのコロッケ昔から好きなんだよな」
マサもリナも満面の笑み。
「それにしてもすごい雨だね」
「だな」
「あのまま帰ってたらビショビショだったわよ」
「かもな」
食べるのに集中している為か、返事が簡潔なマサ。
とりあえず食べ終わるまでは何を言ってもダメだろう。
リナは自分も食べるのに集中することに。
暫くの間、二人の周りでは激しい夕立の音だけが鳴り響いていた。
リナが1個食べ切るよりも早くマサは食べ終わった。
まだ物足りないらしくリナの手元に残っているコロッケをじっと見つめてくる。
それに気付いたリナは残りを一気に口に放り込んだ。
それを口惜しそうに見つめるマサ。
何故だか見てるこちらが可哀想になってくる。
量はどうあれ、とりあえず食べ物をお腹に入れて満足している様子のマサ。
リナは先程から気になっていたおばちゃんの言葉をマサにもう一度聞いてみることに。
「ねぇ、マサ。彼女いるの?」
マサとは高校に入ってからの付き合いだが、彼女がいるなんて一度も聞いたことがない。
「そんなのいねぇよ」
「本当?でもさっきおばちゃんが」
「あぁ、あれか。ん~、まぁ昔ちょっとあってな」
「へ~、どんな子だったの?」
リナは興味津々。
「・・・」
じっと激しく降る雨を見ているマサ。
いつものマサのキャラらしくもない。
当時の彼女のことを思い出しているのだろうか。
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