第二章『ハムカツ』

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第二章『ハムカツ』

・・・・・・ 「あ~あ、やってらんねぇ」 学校も終わり一人自宅に帰っているマサ。 マサの両親は共に学校の先生。 ということもあり、常に「勉強しなさい」の小言がつきまとっていた。 今朝も家を出る直前に父親の敏満から言われた。 そのイライラは学校が終わってからも残っていた。 こんな時はなんか美味しい物でも食べるに限る。 マサは行き付けの肉屋さんへ。 「おばちゃん、コロッケとハムカツね」 「はいよ」 出来立てを受け取るとイスに座り食べ始める。 「うめぇ~」 マサにとっての至福の刻。 そこへ突然邪魔が入る。 「うわ~、濡れちゃったぁ」 一人の女の子が入ってきたのだ。 「すいません、何か買うんでちょっと雨宿りさせてもらっていいですか?」 「いいわよ、何も買わなくて。やむまでゆっくりしていきなさい」 おばちゃんが優しい言葉を掛けると、女の子は嬉しそうにお礼を言っている。 食べることに夢中で気付かなかったが、いつの間にか雨が降り始めていたらしい。 「夕立か・・・」 マサが残り半分になったハムカツを食べながら呟くと、女の子はビックリしたようにマサの方を見てきた。 どうやらマサの存在に気付いていなかったらしい。 お互いの目が合う。 (・・・可愛いな) マサの女の子に対する第一印象はシンプルだった。 すぐさま目をそらすマサ。 再びハムカツに集中しようとしたが、女の子から声を掛けられる。 「あの・・・○中3年の安文先輩ですか?」 「ん?そうだけど・・・何で知ってんの?」 「うちの学校でさえ安文先輩のこと知らない生徒はいませんよ。あっ、私△中1年の戸井調 清香(といちょう・せいか)っていいます」 確かにマサは近隣の学校では名の知れた有名人だ。 あまり他者とはつるまない一匹狼的存在だが、喧嘩は滅法強い。 各中の番長と呼ばれてる3年のトップ達ともやり合って勝っている。 マサが特に誰にも言わなかった為、各中の番長は変わらずそいつらがやってるみたいだが、風の噂でマサの強さは各学校中に知れ渡っているのである。 清香はそれからしばらくいろいろ自分のことを話していたが、マサはあまり覚えていない。 あまり他者と関わりたくはないのだ。 何もかもが面倒臭い。 色んな意味でマサの心は冷めていた。 学校も義務教育じゃなければすぐにでも辞めて、親元を離れて1人で生きていきたいというのが本音だ。 そんなマサの気持ちを知ってか知らずか、清香は頻繁に肉屋に顔を出すようになった。 マサがどれだけ無視しようが気にもせず自分のことを話し続ける。 いつの間にかマサもそんな清香の話に耳を傾けるようになっていた。 清香は小さい頃父親からの暴力を受けていて、そこから母と二人逃げ出して今は母親と二人暮らししていること。 大人への反発心からつい悪い人達とつるんでしまっていること。 境遇は違うが、マサにはなんとなく清香の気持ちが分かるような気がした。 マサがようやく清香に気を許し始めた頃、事件が起きた。
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