第二章『ハムカツ』

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マサがいつものように肉屋でコロッケを堪能していると、 「マサさ~ん」 清香が駆け込んできた。 制服が乱れて本人も泣きじゃくっている。 「どうした、清香?」 マサはコロッケを食べるのをやめると清香に聞いた。 「警察に捕まるかも」 泣き崩れる清香を支えてイスに座らせる。 肉屋のおばちゃんも心配そうに見ている。 「落ち着いて何があったかを話すんだ」 清香の肩に手を置き、安心させるように声を掛けるマサ。 「先輩の友達とご飯食べに行ったらお小遣いくれるって言われて」 それ以上は言葉が続かない清香。 「それって援交じゃねぇか?何かされたのか?」 必死に首を振る清香。 「相手からお金貰ったのか?」 「ううん。友達って聞いてたのに来たのおじさんだったから、おかしいと思ってなんとか逃げて来た」 「そうか。ならお前は何も悪くない。安心しろ」 マサはそう言うと清香をギュッと抱き締めた。 「おばちゃん、この子任せていい?」 「分かったわ。でも、マサ君どうするの?」 「俺はちょっとケジメつけてくる」 そう言うと、マサは駆け出して行った。 「ちっ、雨か。まるで清香の心みたいじゃねぇか」 夕立の中に消えていくマサ。 それからしばらくマサが肉屋に顔を見せることはなかった。 清香は毎日のように来ていたが、そんな清香の元を訪ねて来たのは尾津という年配の刑事。 清香が援交に関わっているかの確認だったので、キッパリと否定しておいた。 その刑事にマサのことを聞いてみたが「あいつなら大丈夫だよ」の一言で詳しくは教えてもらえなかった。 その後、清香は悪い仲間達とはキッパリと縁を切り、普通の中学生活に戻ったらしいということを人伝にマサは聞いた。 「あ~、腹減ったなぁ」 マサが久しぶりに肉屋を訪れると、おばちゃんは何も聞かず嬉しそうに迎えてくれた。 「メンチカツ1個サービスしとくわね」 「やったぁ~、あんがと」 相変わらず嬉しそうにコロッケを頬張るマサ。 ザザァー お決まりの雨。 「うわ~、ビショビショ」 そこに一人の女の子が駆け込んできた。 (まさか) あのマサがコロッケそっちのけで女の子の方に目を向けると、 「お前俺のカバンまで防御に使うなよ」 後に男も続いている。 それは清香とは別人で、しかも男連れ。 (・・・んなわけねぇか) 「ゴメン、おばちゃん今日傘忘れちゃって。なにせトモが今日は晴れって言ってたから」 「ちょっとなに人のせいにしてるのよ。ナオが折り畳みぐらい持ってくればよかったのに」 トモと呼ばれた女の子が反論している。 「はいはい、夫婦漫才はいいから。やむまでゆっくりしていきなさい」 おばちゃんが笑っている。 どうやらあの二人も常連らしい。 二人のやり取りを見てついマサも「プッ」と吹き出してしまった。 「お前のせいで笑われたじゃねぇか」 それに気付いた男の方が頭をかきながら女の方に文句。 「も~、うるさい。ごめんなさい」 女の子が頭を下げてきたので手で制すと、マサは視線を屋外へ。 「今日もよく降るなぁ・・・大丈夫かなぁ」
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