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 思い残したことは、ない。  今日一日、ひどくあっさりした気分だった。ちょっと遅く起きて、朝ごはんを食べて、久々に絵を描いて、夕飯も食べて、シャワーも浴びて。  あとはスイと別れて、自分の部屋に戻って、眠るだけ。  最後だからって、何か、特別なことをしたいということもなかった。スイとも色んな話をして。本当に、色んな話をした。いつもより、ちょっと充実していたくらいだった。    なのに、ここにきて。  あのクラゲのピアスがなんなのか、気になってしまった。  それから、どうしてココナッツのシャンプーを使っているのか、も。  ――ねえ、なんで。  なんでいつもズボンなの。  スカート履いてるところ見たことない。  髪を伸ばさないのはどうして。  長いのも絶対似合うのに。  ――ねえ、なんで。  なんで、あの時わたしに一緒に食べようなんて声掛けたの。  誰にでもああ言ってたの。  ねえ、わたしのこと。  本当はどう思ってるの。  ここにきて、訊きたいこと、知りたいことが滝のように溢れてくる。  もっと、色んなことを訊いておけばよかった。もっと色々知っておけばよかった。もっと話して、もっと笑って、もっと怒って、もっと悲しんで。  もっと、もっと。  だって。  今日で最後なのに。
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