「あたしの、けらいになって」

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 女の子同士。近い席。似ている響きの名前。  この程度の接点でも、縁というのは結べるものです。  気づけばわたしは、ななちゃんと一緒に行動するようになりました。  ななちゃんとわたしは、とにかくあらゆる面で違う生活を送っていました。  まず、ななちゃんは習い事をたくさんやっていました。  ピアノや空手……その他、二つほど何かやっていた気がします。  その為毎日のスケジュールがびっしり詰まっている生活を送っていました。 「月曜日はコレがあって、火曜日はアレがあるでしょ。それから……」  ななちゃんが指を折りながら忙しそうに話し出した時などは、「へえ小学生なのに大変そう」なんて、自分も小学生のくせに思っていました。  わたしも、一応ピアノ教室に通っていた時期もありましたが……そもそもななちゃんとは違うピアノ教室に通っていたし、「楽しく弾ければいいのよ」というスタンスの先生だったので、正直そこまで真剣に練習をしていませんでした(……本当に、ピアノの先生には申し訳なかったと思っています……)。  だから、ピアノのコンクールに空手の試験に……と忙しそうにしているななちゃんが、少し不思議に見えていたのをよく覚えています。  そして、次に違ったのは家族構成。  わたしは六人家族(ちなみにわたしは四人兄弟の末っ子です)で、ななちゃんは三人家族。  わたしには上にお兄ちゃんやお姉ちゃんがいましたが、ななちゃんは一人っ子でした。  今考えれば、一人っ子だったからあえてたくさんの習い事をさせていたのかもしれませんね。小学生の女の子を家でひとりぼっちにさせているよりは、どこかの教室に通わせた方が親も安心できるだろうし。  それから、ななちゃんは大きなマンションに住んでいました。  しかも、ただのマンションじゃないんです。オートロックのマンションでした。初めて遊びに行ったときはびっくりしました。  ちなみにわたしは、家族六人、都営住宅で仲良くぎゅうぎゅう暮らしてました。これはこれで楽しかったです。  他にもわたしとななちゃんは違う所がいっぱいありましたが……それでもなんとなく遊ぶことが多い友達同士でした。  まあ、ななちゃんはわたし以外にも遊ぶ友達がたくさんいたので、わたしだけポツンと残ってしまう日もありましたが……わたしはあんまり気にしないようにしていました。  自分から積極的に友達を作りにいけないわたしが悪いのだ、という風にずっと思っていたし、一人遊びは保育園の頃から得意だったので、やり過ごすのは慣れていたのです。  ななちゃんが遊んでくれない日は家や児童館でのんびり本を読んで、ななちゃんが声をかけてくれる日は一緒に遊んで……という日々を一人で過ごしていました。  当時のわたしは、本当に受け身な人間だったのです。
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