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気が付くと俺は、デカすぎる馬に乗って疾走している。宇宙から来た白い犬に乗ってる宇宙から来たチャイナ娘みたいになってんだけど。この俺が身にまとっている薄緑色のローブは……ああ、夢か。
手綱を引きながらふと見ると、案の定馬に乗ってる俺と身長の変わらない一条優が赤い衣装を着て猛スピードで走る俺の真横を猛スピードで飛んでいる。
「敵よ! 深月!」
「敵?」
ああ、ザコゾンビがうーあーとうなり声を上げながらヨロヨロとさまよっている。
「よし! 行くぞ!」
馬の腹を蹴ってスピードを増し、ザコに馬を体当たりさせる。
「やったわね! 深月!」
「ザコ潰したくらいで喜んでんじゃねーよ! 一条優!」
「一条優? 何言ってるの? 私は高崎明翔よ」
え?
いつの間にか、俺は馬を下りていて高校の制服を着て誰もいない教室にいる。
誰もいないかと思ったら、背中に寄り添う人の温かさを感じて心臓が早鐘を打つ。
……え……どっち?
一条優?
高崎明翔?
ゆっくりと振り返る。
一条優が笑っている。倒れそう。会いたかった、一条優。
中学の入学式で一条優が違う中学に行ったと知った時、俺はどうして小学校の間に告白しなかったんだろう、勇気を出して話しかけなかったんだろうって、手遅れな後悔をした。
「俺、お前がずっと好きだった。言えて良かったよ、一条優」
一条優の笑顔が豹変した。
「私は高崎明翔だって言ってるでしょ!」
高崎明翔が教室を走り出てしまう。
「待って! 高崎明翔!」
俺は高崎明翔を追いかけて教室を出た。
ハッと目を開ける。閉め忘れたカーテンからの初夏の朝日で部屋は明るい。
……夢……なんっちゅー夢を……。
高崎明翔は一条優ではありえないって頭で分かっても、俺の脳みそはどうにも納得できねえみたいだな。
なんだよ、夢かー……。いつか本当に言いたい。一条優、本人に。
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