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イケメンメガネ王子・柳 龍二
「では、2年1組の学級委員長は柳龍二くんに決定でーす」
「よろしくお願いします」
端正な顔にメガネをかけ、金髪の肩にかかりそうな髪の右側だけ赤いピンでバッテン×に留めている柳龍二が黒板の前でにこやかに笑った。
女子からキャーと歓声が上がる。
昼休み、明翔、颯太と食堂に弁当を買いに行き、教室で食う。
明翔はカツ丼と弁当を買っている。
「食費エグそうだよな、明翔って」
「しかもすぐおなかからなくなっちゃうから、なんだかもったいないよねっ」
「颯太はもっと食わねえとー。パンだけじゃ大きくなれないぞ、チビッ子」
明翔が颯太の頭をなでる。あーあー、「かわいい」を維持したいならブチ切れんなよ、颯太。
「あ……あんまり食べ過ぎたらさすがに太っちゃうよ、カワイ子ちゃん」
「カワイ子ちゃんやめろ」
言い合うチビッ子とカワイ子ちゃんを無視して弁当を食っていると、学級委員長サマが女子に囲まれて教室に入って来た。
「あ、イケメンメガネ王子だ」
「何それ」
「柳龍二の別名」
「別名」
明翔はケタケタ笑っているが、あーも女子に囲まれるとはうらやましい限りだねえ。俺も柳と同じクラスになったのは初めてだが、存在くらいは知っている。
颯太が「かわいい」の演出を忘れ白い目で柳を見る。
任侠道を生きる颯太にはただの軽薄な男に見えるのだろうが、オシャレヤンキーのような見た目をしておきながら成績優秀、無遅刻無欠席を誇る学級委員長にふさわしい人物でもある。
「帰りにゲーセン行こうよ、明翔」
「ゲーセン? いいよ。俺あらゆるゲーム得意だから、俺に負けても泣くなよ、チビッ子」
「お前ら仲良しな」
「深月も来るんだよ!」
「えー、俺も~?」
完全になめた口利く明翔をシメたいだけじゃねーか。近所にヤンキーの巣窟なゲーセンがあるため、一家でよくゲーセンに行く颯太は引くほどうまい。
年の離れた末っ子である颯太が兄姉たちに勝てる唯一のモノがクレーンゲームである。
放課後、ゲーセンへ向かう俺たちの前を偶然にもイケメンメガネ王子こと柳龍二がまた女子に囲まれつつ歩いている。背が高いから囲まれてても顔が見えとる。
てか、大人しくて真面目な生徒が多い我が聖天坂高校であんな金髪は柳くらいなものだ。
「あんだよ、あの金髪」
「おい、かましてやろーぜ」
「いーね、いーねえー」
へっへっへっ、と笑い声が聞こえる。4人のヤンキー御一行が俺たちの横を通り過ぎた。
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