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呂久村 深月、高校2年生に進級
4月。俺、呂久村深月は聖天坂高校の2年生になった。
2年1組か……お、颯太と同じクラスか。てか、颯太しか知ってる男いねえ。まーいっか、ひとりでも知ってる男がいれば気が楽だ。
「深月! また同じクラスだねー、よろしくね!」
とモブ女生徒ゆりが背中を叩いてくる。
「おー、よろしく」
「あの、同じクラスになった記念に、どっか行かない? 今日は終わるのも早いし、お昼ごはんでもどうかなあって」
どんな記念だよ。その記念を認めると何かと記念日設けられそうなんだけど。気が付いたら「交際1カ月記念日ね♡」とか言われそうなんだけど。
「わりー。俺今日腹の調子超悪いから食える気しねえ」
「え、腹が?」
「ゆり! これ超良かった! 神! まさに神! てか受けが尊すぎて泣いた!」
「は? 受け?」
名も知らぬモブ女生徒が一冊の漫画単行本を手にゆりの元へ走って来る。でけー単行本だな。
「ちょっ……ちょっと、やめてよ!」
ゆりが慌てている様子なのが興味を引いた。
「何、この漫画?」
名も知らぬモブ女生徒の手から単行本を奪う。表紙にはえっらい繊細な線で泣いているメガネ男子の涙を舐め取るヤクザみたいな男が描かれている。
「何この表紙。内容が全く想像つかねえんだけど。少年漫画?」
「BLだよ、BL!」
「びーえる?」
「ボーイズラブ」
「ボーイズ? ああ、おっさんずラブ?」
「そうそう」
「やめて! 解説しないの!」
ゆりが俺の手から単行本を取り返そうと跳ねているが、この小柄な女生徒には届くまい。
パラパラと中身を見る。
……なんか、グラサンヤクザが船の上でメガネ男子を押し倒してんだけど。
はだけたシャツから胸に口を付けていたヤクザがグラサンを外しながら笑ってメガネ男子を見下ろしてんだけど。
スーツを脱ぎ始めたヤクザに真っ赤になっている涙目のメガネ男子が「僕をあなたのモノにしてください」とか言ってんだけど……。
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