ある日のヒトコマ。

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午前のうちは良かった。ただ午後も夕方になると室温が34度に上がり、夏に負けた気になるからと毅然とした態度でクーラーを付けない部屋は自身が焼肉になりそうな気分になり、たまらなくなって家の外に飛び出した。(って誰がカルビじゃ。) 藤の枯れ葉がヒラヒラと落ちてきた。 先日の剪定で間違って枝を折ってしまったのだろう。案の定上の方にカラカラに乾いた枝を見つけた。 皮一枚繋がっているのだろう。その僅かな繋がりから必死に水分を補給しようと頑張っている。 無駄な事を。 ……ありゃ?こりゃいかん。なんだか冷たい人のようなことを言ってしまった。淑女たるものいつも心は清く美しく朗らかに。 2メートル近い藤の木を見上げると、必然的に西の空が視界に入った。なんだかオドロオドロしい鈍色の雲が不気味な速度でこちらに近づいてきている。 はて、お天気お姉さんは雨が降るだなんて言っていただろうか?……いや言っていたような気もする。あぁ今日も綺麗だなとうっとりと見とれていただけでろくに内容を聞いていなかったな。 気づけばポツンポツンと気の強そうな雨粒が地上に落下してきた。恵みの雨だ。 またたく間に地上は白けむりが漂う。今私は玄関の軒先にたたずみ雨空を見上げる、ふりをしてその先にあるご近所の可愛いお兄さんの部屋を覗き見る。ぐへへ。 おや、可愛いお兄さんはご在宅ではない?お出かけ中かしら?などと考えているとキィーッと自転車のブレーキ音がした。お兄さんや、自転車に油をさしたらどうでしょう。びしょ濡れになったお兄さんが帰ってきた。眼福。 きっとお兄さんだけではないのだろう。何万人とこの雨に濡れている。セットした髪の毛、お洒落着、シューズもグチャグチャになっているだろう。カバンの中はどうだろう。デジタル機器は壊れてはいないだろうか。希少価値の本(※神と崇める同人作家様の漫画、説等を指す)などは破れていないだろうか。 最悪だと思う人もいれば最&高だと思う人もいるのだろう。 ……いや、まぁ、思い付かないわけだが。 植木に水をやる手間が省けるといっても、今この時間の雨じゃ根っこが腐る可能性があるし、気温が低くなるかもしれないけれど、湿度が高くなって不快指数爆上がりだし。 良いとこ、夕立の良いとこと言えば…… バシバシと降る雨も強い西日の中少しずつ弱くなってきて、雨粒でキラキラと光る空をチリンチリンと虹が橋をかける。なんともフォトジェニック、インスタ映え映えな映像を地球が見せてくれて嫌な気持ちを持った人間を清く美しく朗らかな気持ちに変えてくれることだろうか。 ……だったら最初っから雨降らせんなよってか。 それを言っちゃあおしめーよぉ。 さてと、私は開けっ放しの自室の窓を閉めてこよう。窓の側には数種類の多肉植物と大好きな漫画の1年ぶりの新刊が置いてあるけど今の私はまだ心洗われる景色を見ているからとっても朗らかなの。 チキショウコンニャローッ!!
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