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65・この恋は貴方の匂いがする※
そっとカヲルさんの頬に手を添え唇を合わせた。その唇は小さく震えている。ゆっくり唇を離すと、カヲルさんが閉じていた瞼を恥ずかしそうに開き、うるうると潤んだ瞳が俺を射抜いた。
カヲルさんへの欲望がリミッターを振り切り、ラグジュアリーな部屋に似つかわしくない俺の中のオオカミが咆哮を上げる。
「あ、っ……洞木く、」
身の危険を防ごうと腕を伸ばすそれよりも早くカヲルさんの身体を奪い、哀れ囚われの姫の如くベッドへと連れ去る。
「ちょっ、まだ、シャワー……」
「後で入りましょう」
「だって」
「カヲルさんの匂いが消えるから嫌です」
俺はネクタイを緩めてカヲルさんの上にのしかかった。細くてしなやかな手首を掴みカヲルさんを動きを封じると、無防備に香るうなじへ鼻先を埋めた。
「好きです、カヲルさん。大好きだ」
色も手触りも柔らかいその髪。
一見冷たそうなでも笑うと優しい目元。
すっと通った美麗な鼻筋。
小さくて食べてしまいたくなる唇。
痕を付けるとなかなか引かない白い首筋。
俺はそのひとつひとつにキスを落とし、マーキングをしていった。
カヲルさんの長袖シャツを脱がしていく。
色っぽく浮き出ている鎖骨。
薄い筋肉で覆われた二の腕。
恥ずかしがり屋の腋の下。
「あ、……っ、そこ…だめだっ……て、いつも」
血管の浮き出た細い手首。
俺をいつも包み込んでくれる優しい掌。
傷ひとつ付けたくない綺麗な指先。
チュ……チュ……と音を立てて肌を吸い上げれば、そこから花が開くように色付いていく。
拳を口に当てて感じている自分を諫めるカヲルさんに愛おしさを募らせると、俺は再びカヲルさんを食らい尽くす。
敏感な指先から降りて腕の内側をくすぐるように舌先を添わす。皮膚の柔らかい部分に唇を当てると、カヲルさんはくぅっと喉の奥の方で小さく鳴いた。
掴むと折れそうに細くたおやかな腰骨。
縦長にくびれた魅惑的なへそ。
早く舐めて、と硬く芯を持った胸の尖り。
全身で感じ入るカヲルさんの唇から漏れる喘ぎ声が熱量を増した。
「……もっと、ちゃんと……」
さわさわと掠るように愛撫する俺に痺れを切らしたカヲルさんが、自分から強請るようになってくれたのも嬉しい。
「こうですか?」
初めの頃は小さく主張の薄かったそこも、今では俺に吸われまくってるせいですっかり熟している。指先で優しく摘めば、あ……っ、と良い反応が返ってきた。最初の頃は痛くなってはいけないとそれ以上の行為は自制していたが、最近は爪で軽く刺激されるのが気に入ったらしく、少し意地悪をして焦らしていると「もっと……」と恥じらいながらおねだりしてくれるようになった。
その熟れた先端を指で弾いたり、舌を尖らせてなぞるように舐めたり散々焦らした後に爪でカリ……と引っ掻くと、
「んっ……あぁっ……」
と、脚を突っ張るようにして熱を迸らせた。
ビクビクと反らせた足の爪先。
柔らかくしなるような太腿。
露で濡れそぼった花茎の先端。
甘い香りを味わうように口に含むと、あっという間に息を吹き返した。
とくとくと流れ出た蜜は垂れ落ち、奥を濡らしていく。舐め取っては塗り込め、舌の出し入れを繰り返すうちに、最奥は柔らかく花開いた。早く早くと誘われているようだ。
「挿れても、いいですか」
それでも確かめるように聞くと、押し寄せる快感になおもいやいやをするように頭を振りながら、それとは裏腹な涙声が返ってきた。
「挿れて、はや、く」
繋がる瞬間に、今この世界には二人しかいなくて、二人はひとつになり世界は完結するのだと俺は実感する。俺を見つめる潤んだ瞳の奥で、カヲルさんも同じだと教えてくれる。
「愛しています」
「わたしも、です…」
貴方から香る匂いに、俺は貴方に永遠に恋をすると誓うのだ。
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