第4章 魔法使いと召喚魔法の宿題

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「やっと終わったぁ……」  7限の日は疲れる。やっと放課後。帰り支度をして立ち上がると、照君が「真奈!」と寄ってきた。こちらは疲れていないのか、朝とほぼ同じ顔をしている。  いいなぁ、新しい場所って慣れないうちは大変だけど、照君はきっと全部楽しめるタイプだよなぁ……なんて思いながらぼうっとしていると、突拍子もないことを言われた。 「真奈、金曜日空いてる?」 「え? 放課後?」 「うん、つーか夜」 「夜ぅ!?」  思った以上に声が出て、慌てて押さえる。クラスメイトがちらちら気にしている。 「都合悪い?」  照君が珍しく気遣って小声でコソコソ聞いてきた。距離が近くなる。 「いや、空いてはいるけど……親に言わないと」 「オッケー聞いといて。よろー」 「ノリ軽っ」  それにしても距離が近い。周りに机があるせいか朝の通学より近い。私は努めて冷静であろうと表情筋に力を入れた。  きりっとするんだ真奈。無駄に整った顔とか、半袖から伸びる、ほどよく筋肉のついた腕とか見るんじゃない。そんで夜()って何があるんだとか想像するんじゃない。  これは照君、昔は坊主頭で虫取り網持って走り回ってた照君……。 「き、金曜日の夜、何するの?」  意識するあまりちょっとどもった。最悪。 「あ、夜って聞いてなんか想像した?   ヤダー」 「ししししてないよ! ニヤニヤしないでよ! ……あ、夏祭りの時みたいに夜間飛行とか?」 「いや、例の宿題ちょっと手伝ってもらおうかなって。うちの親もどっちか付き添いあるし大丈夫だから」  親同伴、と聞いてなぜだかちょっとテンションが下がる。 「宿題って何するの……」 「当日のお楽しみ♪ 迎えに行くからよろしくな!」  そうやって照君が言い終えたところで、教室の外から「高崎ー!」と声がかかった。  廊下に見慣れない男子がいる。たぶん、昼休みに仲良くなったという、隣の隣のクラスの子だろう。 「おー、今行くわ! じゃあな真奈、俺、応援団の届け出すから! チュンと気をつけて帰れよー!」  照君は大きな声でそう言って、教室を出ていった。笑い声が遠ざかる。元気だなぁ。
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