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想が慌てて今にも倒れてしまいそうな結葉へ手を伸ばそうとしたのを、偉央がごくごく自然に割り込んで制すると、結葉の腰を抱くようにして支える。
そうして想をひたと見据えた。
「――失敬。どうやらうちの妻が途中で体調を崩してしまったようですね?」
声こそ穏やかだけれど、偉央からはこれ以上結葉に近付くなというオーラが出ていて。
想は思わず後ずさる。
(そりゃそうか。目の前で自分の女、他の男に触られそうになったら腹立つよな)
実際想は今、すぐ目の前で自分に近い存在だと思っている結葉を偉央に掻っ攫われていい気がしなかった。
それに、もっと言えば過去にも同じように偉央のことを憎々しく思ったことがあるのを、鮮明に覚えている。
それでも、自分の気持ちはさておき結葉さえ幸せならばそれでいいとも思ってきた。
だが、幸せになったと信じていたはずの結葉と久々に再会してみれば、何かが噛み合わないような違和感を覚えるのは気のせいだろうか。
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