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「戸棚ん中に玄米茶があるんだ」と言われた結葉は、胸の奥がチクンと疼いた。
(偉央さん、ちゃんとご飯食べたかな)
玄米茶は、夫が好きなお茶だったから。
結葉はどうしても偉央のことを思い出してしまう。
あんなに彼の元から逃げ出したいと思ったのに、ふとした時に偉央を思い出しては気にしてしまうのは、ああいう日々の中でも、確かに自分は偉央から愛されていたと思えるシーンが一つや二つではなく、思い浮かぶからだろう。
テーブルの上に熱いお茶がこぼれたとき、偉央は咄嗟に結葉を庇ってくれた。
あのとき彼が負った火傷は、しばらくの間偉央の腕に残っていた。
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