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(そんなことを言っちまったら結葉が気にするじゃねぇか。馬鹿なのか俺は)
きっとそれを言えば、行くあてのない結葉は押し黙るしかない。
だけどそんなことを言うのはフェアじゃないではないか。
想は結葉にはなるべく伸び伸びと過ごして欲しい。
いくら彼女の身体を案じてのこととはいえ、結葉を萎縮させるようなことは絶対に言うべきじゃない。
「……分かった。でも――」
結葉は渋々といった調子でうなずいてくれて。
でも、と言葉を続ける。
「でも、お願い。やっぱりアンダーマットレスは明日ちゃんと買ってきて? 私のせいで想ちゃんが寒いのはイヤ。もちろん、私のワガママだし、私が買うことにしてツケにしといてくれたんでいいから」
心配そうに眉根を寄せる結葉を見て、想は小さく吐息を落とす。
「……分かったよ」
結局、自分は結葉にはとことん甘くて敵わない。
そう思った。
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