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想が結葉に衝撃の告白をしていた丁度その頃――。
タワーマンションの一室で、偉央は一人、まんじりともせず暗闇に溶け込むように静寂をまとって座っていた。
偉央にとっては結葉がこの家を出て行って初めての夜だ。
偉央は冷蔵庫のモーター音と、自分の吐息ぐらいしか聴こえてこないひっそりと静まり返った部屋の中、電気も付けずにスツールに腰掛けていた。
昼休みに帰宅した時、結葉が部屋からいなくなっていることに気が付いて、山波想と話して。
電話口、想から明確に結葉を匿っていると聞かされたわけではなかった偉央だったけれど、相手の口ぶりから結葉が想を頼っていることは明白だと思った。
それと同時、想が、結葉が家出をするに至った経緯――偉央が結葉にした非人道的な数々の仕打ち――を知っていることも確信したのだ。
だからこそ、偉央は意を決して想に言ったのだ。
『――でしたら話は早い』
と。
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