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あのまま結葉と共にいたら、自分は恐らく結葉を殺めてしまっていた。
偉央は、愛する結葉を傷付けたいわけでも――ましてや殺したいわけでもない。
ただ、健やかに自分のそばで笑っていて欲しかったのだ。
だけど結葉を殺してしまう以外に、自分が安心できる術はないとも思う自分がいて。
気が付くと、いつも結葉に酷いことをして怯えさせ、身体的にも肉体的にも苦痛を強いてしまっていた。
ふと冷静になったとき、偉央はいつも後悔の念に駆られるのと同時、今のままではダメだという焦燥感に苛まれ続けていた。
自分の中の〝魔〟から結葉を守るには、結葉を、自分の手が届かないところに逃すしかない。
分かっているのに、偉央はずっとそれが出来ないでいた。
(結葉、僕をひとりにしないで?)
と思う自分と、
(結葉、僕のそばから一刻も早く逃げて!)
と、真逆なことを願う自分とが、心の中でずっとせめぎ合っていた。
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