28.初めての夜

24/42
前へ
/848ページ
次へ
 もしそういう困難を乗り越えて結葉(ゆいは)が逃げてなら、彼女の意思を尊重して追うことはすまい。  そう心に決めていた。  もぬけのカラになった部屋を見た時、結葉(ゆいは)に逃げて欲しいと思っていた自分を押さえつけるようにして、嘘であってくれと泣き叫ぶ自分が強く出てしまって、気が付けば取り乱すように結葉(ゆいは)の影を追い求めてしまっていた。  だけど――。  置き去りにされたバスタオルとキッズ携帯を見た時、偉央(いお)の中でやっと――。  答えが出せた気がしたのだ。  偉央(いお)はいつかこう言う日が来た時のために、と仕舞っておいたものをいつも持ち歩いているカバンから取り出した。  山波(やまなみ)(そう)に約束した通り、これを彼宛に送らねばならない。  この心が揺らがないうちに――。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

742人が本棚に入れています
本棚に追加