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もしそういう困難を乗り越えて結葉が逃げてくれたなら、彼女の意思を尊重して追うことはすまい。
そう心に決めていた。
もぬけのカラになった部屋を見た時、結葉に逃げて欲しいと思っていた自分を押さえつけるようにして、嘘であってくれと泣き叫ぶ自分が強く出てしまって、気が付けば取り乱すように結葉の影を追い求めてしまっていた。
だけど――。
置き去りにされたバスタオルとキッズ携帯を見た時、偉央の中でやっと――。
答えが出せた気がしたのだ。
偉央はいつかこう言う日が来た時のために、と仕舞っておいたものをいつも持ち歩いているカバンから取り出した。
山波想に約束した通り、これを彼宛に送らねばならない。
この心が揺らがないうちに――。
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