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「――それ、本当?」
想の言葉がにわかには信じられなくて、結葉は想をじっと見詰めた。
発した声が震えていたのは気のせいじゃない。
「ああ、お前の旦那から直接言われたから間違いねぇよ」
そんな結葉に小さく吐息を落とすと、想はスッと居住まいを正した。
そうして結葉を真っ正面から見据えると、「俺、お前のこと、御庄さんから頼まれたんだ」と明言してきて。
その言葉に、結葉は「え……?」と思わず想を見上げてしまう。
「お前、ほとんど何も持たずに出たはずだから……必要なものを揃えてやってくれって。金も出すからって……。すげぇ真剣に頼まれた」
そこで想は結葉からフイッと視線をそらせると、「金に関しては即行で断ったけど……多分引き下がってはくれないだろうなって思う」とこぼした。
「な……んで?」
結葉は言葉を発するたび、自分の声が震えているのが分かったけれど、どうしようもなくて。
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