28.初めての夜

25/42
前へ
/848ページ
次へ
*** 「――それ、本当?」  (そう)の言葉がにわかには信じられなくて、結葉(ゆいは)(そう)をじっと見詰めた。  発した声が震えていたのは気のせいじゃない。 「ああ、お前の旦那から直接言われたから間違いねぇよ」  そんな結葉(ゆいは)に小さく吐息を落とすと、(そう)はスッと居住まいを正した。  そうして結葉(ゆいは)を真っ正面から見据えると、「俺、お前のこと、御庄(みしょう)さんから頼まれたんだ」と明言してきて。  その言葉に、結葉(ゆいは)は「え……?」と思わず(そう)を見上げてしまう。 「お前、ほとんど何も持たずに出たはずだから……必要なものを(そろ)えてやってくれって。金も出すからって……。すげぇ真剣に頼まれた」  そこで(そう)結葉(ゆいは)からフイッと視線をそらせると、「金に関しては即行で断ったけど……多分引き下がってはくれないだろうなって思う」とこぼした。 「な……んで?」  結葉(ゆいは)は言葉を発するたび、自分の声が震えているのが分かったけれど、どうしようもなくて。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

742人が本棚に入れています
本棚に追加