28.初めての夜

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***  (そう)は、まるで先をうながすように自分の手に触れてくる結葉(ゆいは)をじっと見つめると、己れの中にある躊躇(ためら)いを吐き出すように小さく吐息を落とした。  そうして結葉(ゆいは)の真剣さに応えるように「離婚届」と、今度こそちゃんと結葉(ゆいは)に聞き取れるよう明瞭に告げる。 「離、婚……届……?」  (そう)の言葉を、結葉(ゆいは)抑揚(よくよう)のあまり感じられない声音で復唱するのを見て、(そう)は慌てて言い募らずにはいられなかった。 「あ、あのな。提出するもしないもお前に任せるって……御庄(みしょう)さんからはそう申し添えられてっから。その、お前が納得いくまでは出す必要ねぇと思う」  ――最悪出さないという選択肢だってあるぞ?と思ったけれど、それは何となく言えなかった(そう)だ。
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