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想は、まるで先をうながすように自分の手に触れてくる結葉をじっと見つめると、己れの中にある躊躇いを吐き出すように小さく吐息を落とした。
そうして結葉の真剣さに応えるように「離婚届」と、今度こそちゃんと結葉に聞き取れるよう明瞭に告げる。
「離、婚……届……?」
想の言葉を、結葉が抑揚のあまり感じられない声音で復唱するのを見て、想は慌てて言い募らずにはいられなかった。
「あ、あのな。提出するもしないもお前に任せるって……御庄さんからはそう申し添えられてっから。その、お前が納得いくまでは出す必要ねぇと思う」
――最悪出さないという選択肢だってあるぞ?と思ったけれど、それは何となく言えなかった想だ。
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