742人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「ごめんね、想ちゃ。遅く……なっちゃった」
結葉は想の腕の中で静かに静かに泣き続けて……。
一時間経つか経たないかの頃、やっと泣くのをやめて、そうつぶやいた。
涙に泣き濡れた顔を隠すこともせず真っ直ぐ想を見上げると、
「一杯泣いたら少しスッキリした。――想ちゃん、黙って泣かせてくれて有難う。ずっと胸を貸してくれて有難う」
言って、今度こそ心の底からの笑顔を想に向けてくれる。
「こんな胸で良ければいつでも」
照れ隠し。
想はちょっとだけ結葉から視線をそらせるようにして、わざと軽口を叩いて見せる。
「うん」
結葉は想に短く一言そう返すと、
「お風呂っ! 今度こそちゃんと入ってくるね」
まるで気持ちを切り替えるみたいに明るい声音でそう言って立ち上がる。
最初のコメントを投稿しよう!