28.初めての夜

31/42
前へ
/848ページ
次へ
「絶対私、いまお化粧崩れちゃってるよね。やーん。恥ずかし〜」  悪戯っぽく微笑んで見せる結葉(ゆいは)が、(そう)にはとても意地らしく思えた。  きっと結葉(ゆいは)は風呂の中でまだもう少し泣くんだろうな。  そんなことを思いながら、 「(ぬく)もって来い」  殊更(ことさら)〝ゆっくり〟のところに感情を込めた。  時間なんて気にしなくていいから。  気が済むまで泣けばいい。  明日から現実にしっかり向き合っていけるように。  結葉(ゆいは)の涙で濡れたズボンをぼんやり眺めながら、(そう)は〝風呂上がりにはしっかり水分補給させてやんねぇとな〟と思った。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

742人が本棚に入れています
本棚に追加