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「いーや。俺も同じだから……別に変じゃねぇだろ」
もう子供の頃のように無邪気に戯れ合うのは無理なんだな、と今更のように実感させられた二人だ。
「私ね、偉央さんに出会う前は……ずっと想ちゃんに片想いしていたの。――ふふっ。知ってた?」
どこか悪戯っ子のように小さく笑う結葉の声に、想は(マジかよ)と思わずにはいられない。
兄妹のように接してきた女の子だから、想は自分の中に芽生えた恋心を必死で隠してきたのだ。
幼なじみという生ぬるい関係を壊したくなくて。
なのに――。
もし自分がもっと勇気を振り絞っていたら、ふたりの未来は変わっていたのだろうか。
そう思わずにはいられない。
だが、悲しいかな。過去はどんなに足掻いても変えられない。
では未来は――?
「俺も……ずっと結葉のこと好きだけどな。……お前こそ知らなかっただろ」
極力何でもない風を装って告げたけれど、想の心臓は、口から飛び出しそうなぐらいバクバクいっていた。
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