28.初めての夜

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「いーや。だから……別に変じゃねぇだろ」  もう子供の頃のように無邪気に(じゃ)れ合うのは無理なんだな、と今更のように実感させられた二人だ。 「私ね、偉央(いお)さんに出会う前は……ずっと(そう)ちゃんに片想いしていたの。――ふふっ。知ってた?」  どこか悪戯っ子のように小さく笑う結葉(ゆいは)の声に、(そう)は(マジかよ)と思わずにはいられない。  兄妹のように接してきた女の子だから、(そう)は自分の中に芽生えた恋心を必死で隠してきたのだ。  幼なじみという生ぬるい関係を壊したくなくて。  なのに――。  もし自分がもっと勇気を振り絞っていたら、ふたりの未来は変わっていたのだろうか。  そう思わずにはいられない。  だが、悲しいかな。過去はどんなに足掻(あが)いても変えられない。  では未来(これからさき)は――? 「俺も……ずっと結葉(ゆいは)のこと好きだけどな。……お前こそ知らなかっただろ」  極力何でもない風を装って告げたけれど、(そう)の心臓は、口から飛び出しそうなぐらいバクバクいっていた。
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