28.初めての夜

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 (そう)はそれより三十センチ以上低い床の上にいるから、きっとドギマギしてしまっている結葉(ゆいは)の表情は見えないと思う。  思うけれど、何だか恥ずかしくて布団を額の辺りまで引き上げてしまった結葉(ゆいは)だ。  一応自分の恋心は偉央(いお)との出会いをキッカケに一旦ひと区切りつけたよと言うつもりで、「好きだった」と告げた結葉(ゆいは)だったけれど、(そう)の方はまるで現在進行形ででもあるかのように「好き」表現だったことにも結葉(ゆいは)はソワソワさせられている。  偉央(いお)とのこともまだ片付いていないというのに、元々大好きだった(そう)からそんなことを言われて、不埒(ふらち)にもときめかずにはいられなくて。  でも同時に、こんな大変な時に何を浮き足立っているの⁉︎と自分を(いさ)めるもう一人の自分がいることも確かだった。
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