28.初めての夜

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***  結葉(ゆいは)に冗談と言い切られた(そう)は、「本気なんだけど?」という言葉をグッと喉の奥に押さえ込んだ。  考えてみれば、いま結葉(ゆいは)は旦那とのことで頭が一杯のはずなのだ。  それなのに。 (こんな時に俺の気持ちを押し付けられても困るだけだよな)  と反省して。 「そりゃ〜お前がいきなり『好きだった』とか言ってくれるから、こっちだってそうなっちまうだろ」  わざとククッと笑って軽口を叩くみたいにそう返したら、結葉(ゆいは)が「うん。ごめんね」とどこかくぐもった声で返してくる。  ふと視線を転じてみたら、どうやら結葉(ゆいは)、布団の中に潜り込んでしまったらしい。 (動揺……させちまったか)  何だかすごく申し訳ない気持ちがしてしまった(そう)だ。  結葉(ゆいは)が謝ってきたから、それに便乗するように「俺のほうこそ調。悪かったな」と、まるでいまの告白自体結葉(ゆいは)が言うように〝冗談だったのだ〟と認めるような言葉を返してしまう。
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