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「もしもし?」
初めての着信にドキドキしながら出ると、「結葉、いま大丈夫?」と想の声。
(えっ、嘘っ。もうお昼⁉︎)
そんなに時間が経っているような気はしなかったけれど、家事に夢中になっている間に時間泥棒に遭ったのだろうか。
そんなことを思って壁の時計を見たら、十一時前。ランチタイムと呼ぶには、まだいささか早い時刻だった。
「ごめんな、変な時間に」
家にいる自分に駄目な時間も変な時間もありはしないのに、(ホント、想ちゃんはどこまでも優しいなぁ)と思った結葉だ。
「全然問題ないよ? どうしたの?」
自由人な自分はともかくとして、想はいま、仕事中のはずだ。
それを不思議に思いながら問いかけたら、
「親父がさ、結葉連れて会社に来いって言うんだけど……。いまから迎えに行っても平気?」
言ってから「あっ、けど。もしそこじゃ不安だってんなら別のところで落ち合うんでもいい」と慌てたように言い募る。
想はきっと、山波建設と結葉の実家が隣り合わせなことを気にしてくれているんだろう。
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