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「想ちゃん。私、想ちゃんのこと信じてるから……だから平気だよ?」
ギュッとスマートフォンを握りしめて。
電話の向こうに自分の顔が見えるわけでもないのに真っ直ぐ前を向いて凛とした声音で言ったら、想に「え?」とつぶやかれた。
「ほら。偉央さんは私を連れ戻そうとしてないって言った想ちゃんの言葉。あれ信じてるから実家のそばでも問題ない」
補足するように付け足したら、「ああ」って想が得心が言った様子で吐息を落として。
結葉はそんな想に、小さく深呼吸をしてもうひとつ付け加えた。
「――えっと……それだけじゃなくてね。もしも……もしも予想に反して何かがあったとしても……想ちゃん、全力で私を守ってくれるって言ったから。私ね、その言葉も信じてるの。だから……おじさんが会社で待つって言うなら、私、そこに行くんで全然構わない」
結葉が、少しつっかえながらも迷いのない声音でそう言ったら、想が電話口で息を呑んだのが分かった。
「結葉。俺、お前の信用、絶対裏切らねぇって誓う! すぐ迎えに行くから出れるように支度して待ってて?」
ややして結葉に投げ掛けられた想の声音が、どこか自信に満ち溢れた男らしいものになっていた気がしたのは、きっと結葉の気のせいではないだろう。
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