29.公宣からの提案

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*** 「結葉(ゆいは)ちゃん、ごめんね。わざわざ来てもらって」  山波(やまなみ)建設の会議室で、結葉(ゆいは)(そう)と二人、ここの社長であり(そう)(せり)の実父でもある山波(やまなみ)公宣(きみのぶ)と対面していた。  結葉(ゆいは)の右隣に(そう)、長机を挟んで真向かいに公宣という席順だ。  さっき事務員さんがやって来て、三人分のコーヒーを出してくれた。  公宣に勧められて結葉(ゆいは)は自分の前に置かれたカップにミルクを落とす。 (……苦そう)  ソワソワとそんなことを思っていたら、(そう)が無言で自分のものに付いていたコーヒーフレッシュを差し出してくれて。  結葉(ゆいは)は小声で「有難う」と言いながらそれを受け取って、代わりに自分の皿からスティックシュガーを取って(そう)に渡した。  それを見ていた公宣(きみのぶ)が、「これもどうぞ」と自分の皿の上のものを、二人の前に置いてくれる。 「あ、有難うございます」 (他所様の会社の会議室で私たち、一体何をしているのかしら)
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