29.公宣からの提案

23/29
前へ
/848ページ
次へ
(そう)。少し冷静になりなさい。父さんだって結葉(ゆいは)ちゃんは可愛いし守ってあげたいと思っているよ。でもね、――だからこそ、だ」  公宣の言葉に結葉(ゆいは)は俯けていた顔を上げた。 「あの……それはどう言う」  問いかけたら、公宣が結葉(ゆいは)に優しくニコッと微笑みかける。 「結葉(ゆいは)ちゃん、まだご主人との離婚は成立していないんだよね?」 「……はい」  その通りだったので小さく頷いたら、公宣が(そう)をチラリと見遣ってから、すぐさま結葉(ゆいは)に視線を戻す。 「うちの(そう)結葉(ゆいは)ちゃん、それからうちの(せり)が幼い頃から仲良しなのは私も知っているよ? 小さい頃はお互いの家をよく行き来してお泊まり会もしてたよね?」 「はい」  コクッと頷く結葉(ゆいは)を、公宣が愛おしそうに見つめて。 「でも――、今はもうみんないい大人だ。違うかい?」  諭すような口調で言われて、結葉(ゆいは)はギュッとカップを握りしめた。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

738人が本棚に入れています
本棚に追加