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「俺が……あのアパートを出たらいいのか?」
憮然とした口調で想が公宣に問うて。
結葉は「想ちゃんっ!」とそんな想を心配そうに見つめた。
「想。お前は結葉ちゃんを一人ぼっちであのアパートに置いておけるほど薄情な男なのかい?」
だけど公宣に全てを見透かされたような目で見つめられて、想は言葉に詰まってそっぽを向く。
それが出来なかったから今みたいなことになっているのだ。
「じゃあ。親父は結葉に実家にでも行けって言うのかよ」
想が腹立たしげにつぶやいたのを見て、公宣が小さく吐息を落とした。
「それ、お前は結葉ちゃんに言えるの?」
そこで結葉に視線を移した公宣が、「結葉ちゃん、旦那さんに知られてる実家に一人で住める?」と問いかけてきて。
結葉は頷くべきだと分かっていても、どうしてもそうすることが出来なかった。
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