29.公宣からの提案

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「俺が……あのアパートを出たらいいのか?」  憮然(ぶぜん)とした口調で(そう)公宣(きみのぶ)に問うて。  結葉(ゆいは)は「(そう)ちゃんっ!」とそんな(そう)を心配そうに見つめた。 「(そう)。お前は結葉(ゆいは)ちゃんを一人ぼっちであのアパートに置いておけるほど薄情な男なのかい?」  だけど公宣に全てを見透かされたような目で見つめられて、(そう)は言葉に詰まってそっぽを向く。  それが出来なかったから今みたいなことになっているのだ。 「じゃあ。親父は結葉(ゆいは)に実家にでも行けって言うのかよ」  (そう)が腹立たしげにつぶやいたのを見て、公宣が小さく吐息を落とした。 「それ、お前は結葉(ゆいは)ちゃんに言えるの?」  そこで結葉(ゆいは)に視線を移した公宣が、「結葉(ゆいは)ちゃん、旦那さんに知られてる実家に一人で住める?」と問いかけてきて。  結葉(ゆいは)は頷くべきだと分かっていても、どうしてもそうすることが出来なかった。
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