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「親父っ! 何てこと言うんだよ!」
それを見た想が、思わずと言った感じで立ち上がって父親に抗議するのを、結葉はそっと彼の手に触れて止める。
「すみ、ませ……。いまはまだ………無理……です」
それでも結葉は泣きそうになりながら、か細い声でそう言うのが精一杯だった。
そんな結葉の頭を、公宣が優しく撫でてくる。
その感触が、余りにも想の手に似ていたから。
結葉はハッとして顔を上げて、ソワソワと公宣を見遣った。
やっぱり想と公宣は親子なんだと痛感させられた結葉だ。
想がそんな公宣の手を腹立たしげに掴んで結葉の頭から引き剥がして。
公宣は苦笑しながら手を引っ込めた。
「ねぇ結葉ちゃん。例えば、なんだけどね? ……それが結葉ちゃんの実家じゃなくて、我が家だったらどうだろう?」
優しい声音で問いかけられた結葉は、「え……?」とつぶやいて、すぐ前に座る公宣を見詰めた。
「それなら……大丈夫だと、思います」
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