30.山波家での生活

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「親父はさ、家にお袋が居てくれさえすれば何だって頑張れるらしい」  いつだったか、(そう)が淡い笑みを浮かべながら結葉(ゆいは)にそう話してくれたことがある。 「ま、俺もそれ、分からんではねぇんだけどな」  (そう)が言った〝それ〟が、両親に対する思いなのか、はたまた自分が公宣(きみのぶ)の立場になった時に感じる思いなのか、結葉(ゆいは)にはよく分からなかったのだけれど。  ふわふわとした純子を見ていると、ほんわかした気持ちになってくるのは確かだった。  この人を守ってあげたい、助けてあげたい。  そう思わされる不思議な魅力を純子は持っている。  純子がこんな感じだから、(せり)はハキハキしたしっかり者に育ったのだろうし、(そう)がやたらめったら面倒見が良いのだってきっと。  決して能力的に色々劣っているとか言うわけではない純子なのに、一緒にいるとついつい手助けしたくなってしまうのは何故だろう。 「他に何かお手伝いすることはありますか?」  お昼はキーマカレーにすると純子が言って、結葉(ゆいは)は野菜をみじん切りにしたところだ。
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