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結葉がソワソワしながら応えたら、昼前に自分を迎えに来てくれた時に見たんだろう。
「そういや干してあったな」
と想がつぶやいて「あんま遅くなったら冷えちまうか」と眉根を寄せる。
「いまから行って来ればいいじゃないか」
今まで黙って想と結葉のやりとりを聞いていた公宣が、不意に二人の会話に割り込んできた。
「洗濯物も気になるかもしれないけど。それより何より二人とも取って来たい物もあるんじゃないのか? 想。お前、どのみち今日はいまから現場へ行っても中途半端になるだろうし、有給取って引っ越しの手配をしてきたらどうだ?」
「いや、けど……俺、昨日も」
想は何だかんだで昨日も休んでしまっている。
それを気にしているらしい。
「じゃあ想の代わりに父さんが結葉ちゃんとデートがてら行ってこようかな」
そんな息子の迷いを逆手に取るようにクスッと笑うと、公宣がそう言って。
途端想が、カラン、とスプーンから手を離して「俺っ!」と声を張った。
「……考えてみたら有給余りまくってるし、使うことにするわ」
想が不機嫌そうにそっぽを向いて吐き捨てるのを見て、結葉は何だか申し訳ない気持ちになる。
でも――。
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