30.山波家での生活

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*** 「ごめんな、結葉(ゆいは)。親父もお袋も悪気はねぇんだ」  車での移動中。  引っ越し――と言うほど大掛かりなものではないが――には軽トラの方が便利だろうに、(そう)結葉(ゆいは)を乗せることを考えてくれたのだろう。  自分の愛車――黒のヴォクシー――を出してくれた。  ミニバンなのでシートを倒せばそこそこに物は乗せられるし、まぁ問題ないはずだ。 「大丈夫。私、二人が親身になって言ってくれてるの、すごくよく分かったから」  ただ、ちょっとだけ……まだ自分に心の準備が整っていなくて、言われたことを上手く処理しきれなかっただけ。  ゆっくり考えていけば、きっと大丈夫なはずだ。 「サンキューな、結葉(ゆいは)。あんなでも一応俺にとっちゃ~親だし……そう言ってもらえると救われるわ」  (そう)がボソリとつぶやくのを見て、結葉(ゆいは)は小さく吐息を落とす。 「(そう)ちゃんのご両親、すっごく(そう)ちゃんや(せり)ちゃんのこと、大切に思ってらして素敵だなぁって思うの。だから……〝あんなでも〟とか言っちゃダメ」  偉央(いお)との間には子供を成すことが出来なかった結葉(ゆいは)だけれど、いつか自分がもしも子供を持つことが出来る日が来たならば、自分の両親や(そう)の両親みたいに、我が子のことに親身になれる母親になりたい。  そんな風に思った結葉(ゆいは)だ。
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