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「ごめんな、結葉。親父もお袋も悪気はねぇんだ」
車での移動中。
引っ越し――と言うほど大掛かりなものではないが――には軽トラの方が便利だろうに、想は結葉を乗せることを考えてくれたのだろう。
自分の愛車――黒のヴォクシー――を出してくれた。
ミニバンなのでシートを倒せばそこそこに物は乗せられるし、まぁ問題ないはずだ。
「大丈夫。私、二人が親身になって言ってくれてるの、すごくよく分かったから」
ただ、ちょっとだけ……まだ自分に心の準備が整っていなくて、言われたことを上手く処理しきれなかっただけ。
ゆっくり考えていけば、きっと大丈夫なはずだ。
「サンキューな、結葉。あんなでも一応俺にとっちゃ~親だし……そう言ってもらえると救われるわ」
想がボソリとつぶやくのを見て、結葉は小さく吐息を落とす。
「想ちゃんのご両親、すっごく想ちゃんや芹ちゃんのこと、大切に思ってらして素敵だなぁって思うの。だから……〝あんなでも〟とか言っちゃダメ」
偉央との間には子供を成すことが出来なかった結葉だけれど、いつか自分がもしも子供を持つことが出来る日が来たならば、自分の両親や想の両親みたいに、我が子のことに親身になれる母親になりたい。
そんな風に思った結葉だ。
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