30.山波家での生活

17/27
前へ
/848ページ
次へ
「私ね、すっごくすっごくお母さんになるの、憧れてたの」  思わずポツンとつぶやいたら、(そう)が小さく息を呑んだのが分かって。 「あっ、別に不妊だったとかそういうのじゃないから……気を遣わないでね」  結葉(ゆいは)は慌てて言い募った。 「もちろん、別に偉央(いお)さんにも問題があったわけじゃないの」  検査を受けたわけじゃないから絶対とは言えないけれど、結葉(ゆいは)の中では二人とも子を成すには問題のない健全な男女だったはずなのだ。  ただ、偉央(いお)にその気がなかっただけで。 「ま、まぁ子供なんてのは縁だって言うし、な……」  (そう)が言葉を選んだようにそう言ってくれて、結葉(ゆいは)は何だか申し訳ない気持ちになる。 「ごめんね、私が変なこと言っちゃったから(そう)ちゃんに気、遣わせちゃった」 「いや、別にそういうわけじゃ……」  (そう)がモゴモゴと言い訳をする様が、何故だかすごく愛しく思えてしまった結葉(ゆいは)だ。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

737人が本棚に入れています
本棚に追加