30.山波家での生活

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(そう)ちゃんと結婚してたら……今頃私もお母さんになれてたのかなぁ」  (そう)が運転中でこちらを見られないのをいいことに、半ば無意識でポツンとこぼしてしまったのは、そのせいだったのかも知れない。  (そう)ならきっと、二人きりの生活を壊したくないとか言って、避妊を怠らなかったり、そう言う風にはならない気がして。 「…………。バーカ。んな有りもしねぇ〝たられば〟考えても仕方ねぇだろーが」  だけど(そう)が、結構な間をあけた後、前を見据えたままそう答えてくれたから、結葉(ゆいは)は「そうだね」って小さく笑い返すことができた。  あの時こうしていたら、なんて……偉央(いお)との婚姻生活のなかで何度夢想したか分からない。  でも、〝そうしなかった〟からこそ現在があるわけで。  どんなに過去を悔いたところでどうにもなりはしないことは、結葉(ゆいは)が一番分かっている。 「私、ちゃんと前を向いて進んでいけるかな」  ほぅっと吐息を落とすようにそうつぶやいたら、「そのためにみんながお前を支えてんだろ?」と、(そう)が今度こそ即答してくれて。 「うん、そうだね」  結葉(ゆいは)はすごく心強いな、と思った。
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