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「想ちゃんと結婚してたら……今頃私もお母さんになれてたのかなぁ」
想が運転中でこちらを見られないのをいいことに、半ば無意識でポツンとこぼしてしまったのは、そのせいだったのかも知れない。
想ならきっと、二人きりの生活を壊したくないとか言って、避妊を怠らなかったり、そう言う風にはならない気がして。
「…………。バーカ。んな有りもしねぇ〝たられば〟考えても仕方ねぇだろーが」
だけど想が、結構な間をあけた後、前を見据えたままそう答えてくれたから、結葉は「そうだね」って小さく笑い返すことができた。
あの時こうしていたら、なんて……偉央との婚姻生活のなかで何度夢想したか分からない。
でも、〝そうしなかった〟からこそ現在があるわけで。
どんなに過去を悔いたところでどうにもなりはしないことは、結葉が一番分かっている。
「私、ちゃんと前を向いて進んでいけるかな」
ほぅっと吐息を落とすようにそうつぶやいたら、「そのためにみんながお前を支えてんだろ?」と、想が今度こそ即答してくれて。
「うん、そうだね」
結葉はすごく心強いな、と思った。
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