30.山波家での生活

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 結葉(ゆいは)は(これ、(そう)ちゃんが嘘つく時や気恥ずかしい時にやっちゃう仕草だ)って思った。  きっと(そう)は自分の布団はともかく、結葉(ゆいは)の買ったばかりの布団を持って来てくれたかっただけなんだと思う。  サンリコ社のマイハーモニーちゃん柄のピンク・ピンクした寝具一式を見詰めて、結葉(ゆいは)はほんの少し申し訳ない気持ちになる。  でも、結葉(ゆいは)本人も、出来ればこれからも変わらず(そう)が自分のために選んでくれたこの布団で眠りたいな、と思っていたから。  ちゃんと持って来られたことを嬉しく思っていたりするのだ。 「お気に入りのお布団、持って来られて私も嬉しい」  それで、すぐ横に立つ(そう)に小声でささやいたら「おぅ」と素気なく返された。  でも結葉(ゆいは)には(そう)が言葉裏腹。  結葉(ゆいは)の言葉に喜んでくれているのが十二分すぎるほど伝わっていたから。  だから、こんな風に色気のない返しをされても、ちっとも気にならなかった。
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