737人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「なぁ〜に、想。貴方ってば、歯磨き粉、まだこれなの?」
そんな想に追い討ちをかけるように純子が言って。
荷物の中に紛れ込ませるようにして突っ込んであった、歯ブラシなどの入った袋をガサリと持ち上げた。
「あっ、それは……」
想が気まずそうに眉をひそめるのを見て、結葉も思わず(あ〜ん。見つかっちゃった)と思ってしまう。
実は結葉自身、昨日からずっと、聞きたくても聞けなかった〝それ〟だったけれど、さすが母親。
容赦なくズバッと切り込んできた。
「だって想。これ、子供用歯磨き粉よ?」
「仕方ねぇだろ。辛いの苦手なんだから……」
「カレーは辛口いけるくせに〜?」
「カレーの辛さと歯磨き粉の辛さは種類が違うわ!」
言いながら、純子が手にしたアメニティ用品一式を「いいから返せ!」と引ったくるように取り返すと、想が決まり悪そうに吐息を落とす。
「ゆいちゃんも驚いたでしょ〜」
急に水を向けられて、結葉はどう返したものかと戸惑ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!