30.山波家での生活

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*** 「なぁ〜に、(そう)。貴方ってば、歯磨き粉、まだなの?」  そんな(そう)に追い討ちをかけるように純子が言って。  荷物の中に紛れ込ませるようにして突っ込んであった、歯ブラシなどの入った袋をガサリと持ち上げた。 「あっ、それは……」  (そう)が気まずそうに眉をひそめるのを見て、結葉(ゆいは)も思わず(あ〜ん。見つかっちゃった)と思ってしまう。  実は結葉(ゆいは)自身、昨日からずっと、聞きたくても聞けなかった〝それ〟だったけれど、さすが母親。  容赦なくズバッと切り込んできた。 「だって(そう)。これ、子供用歯磨き粉よ?」 「仕方ねぇだろ。辛いの苦手なんだから……」 「カレーは辛口いけるくせに〜?」 「カレーの辛さと歯磨き粉の辛さは種類が違うわ!」  言いながら、純子が手にしたアメニティ用品一式を「いいから返せ!」と引ったくるように取り返すと、(そう)が決まり悪そうに吐息を落とす。 「ゆいちゃんも驚いたでしょ〜」  急に水を向けられて、結葉(ゆいは)はどう返したものかと戸惑ってしまった。
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