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確かに昨夜、洗面所にイチゴ味の歯磨き粉が置かれているのを見た時、(想ちゃん、もしかして隠し子とか⁉︎)と思ってしまっただなんて口が裂けても言えない、と思った結葉だ。
でもすぐ、想が小学生に上がっても大人用の歯磨き粉にシフトできなかったのを思い出して、(もしかして今も?)と思って。
「あ、あのっ。想ちゃん、小さい頃からそうだったから、えっと……そ、そんなには驚かなくて……」
言葉を濁すように言ったら、純子にヨシヨシと頭を撫でられてしまった。
「見た目はあんなに怖くなっちゃったけど……中身はこんなでちっとも変わってないからぁ〜。結葉ちゃん、これからも想と仲良くしてやってね」
小声で耳打ちされて、結葉はつられたように小さな声で「はい、もちろんです」と答えて。
そんな様子を見ていた想に、「結葉! いつまでもお袋の相手してんな! 荷物どんどん下ろしていくぞ!」とほんのちょっと声を荒げられてしまう。
「わっ、ごめんなさいっ!」
慌ててそれに返事をしながらも、
(いや、あれは想ちゃんの照れ隠しだから)
そう思って、口の端が緩んできてしまうのを、なかなか引き締められなかった結葉だ。
不機嫌そうに荷物を車から下ろす想の耳が、未だに赤いことに結葉は気付いていたから。
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