31.大切な連絡

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*** 「(そう)、お前宛に書留が届いてるぞ」  昼過ぎに仕事に使う道具を取りに一旦会社に戻ってきた(そう)は、いつになく重い表情をした公宣(きみのぶ)からA4サイズ相当の封筒を手渡された。  差出人を見ると『御庄(みしょう)偉央(いお)』からで。 (思ったより時間かかったな)  と思ってしまった(そう)だ。  偉央(いお)は電話では「すぐに送ります」と言っていたけれど、実際のところなかなか踏ん切りがつかなかったのかも知れない。  ショッピングモールで(そう)偉央(いお)からの着信を受けてから、実に半月近くが経過していた。  その間、結葉(ゆいは)は立ち位置が宙ぶらりんのまま。  (そう)は、そんなある種の膠着(こうちゃく)状態に、内心ヤキモキさせられていた。  結葉(ゆいは)も一見普段通りに過ごしているように見えたけれど、きっと何も思わなかったわけじゃないはずだ。  相手からのリアクション待ちの期間というのは、実際の時間経過よりも長く感じられるものだし。 (さて、どうしたものか……)  公宣から渡された荷物の宛名は山波(やまなみ)建設内の山波想(じぶん)になっているけれど、中身はほぼ結葉(ゆいは)宛だろうと言うのは開封しなくても分かる。  (そう)は、果たして開けるべきか否かをしばし逡巡して。  迷いを吐き出すみたいに大きくふぅーっと吐息を落とすと〝開封しよう〟と心に決めた。  一度自分がサラリとでも中身を確認しておいた方が、結葉(ゆいは)に渡す時に心の準備が出来るな、と思ったから。
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