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「社長、数分ばかり会議室をお借りします」
勤務中なので父子とはいえ言葉遣いには気をつけている想だ。
その辺りをちゃんとしておかないと、なぁなぁになりそうでイヤだったから。
これは、想が山波建設に就職すると決めた際、父親と取り決めたルールだった。
以前結葉も交えて会議室で父親と対峙した時、つい結葉を守りたい一心でそこの辺りを蔑ろにしてしまったのを苦々しく思い出した想だ。
いつ如何なる時にも冷静さを失ってはいけないのに。
もしかしたら今後偉央と向かい合わねばならない時が来るかもしれない。
その時に備えて、感情のコントロールをもう少し上手くならねば、と思った。
***
想が封書を手にしているのをチラリと確認した公宣は、「分かった」と一言だけ返すと、それ以上は何も言ってこなくて。
そんな父親の態度が、今は有難いなと思った想だ。
結葉の居候生活を快く許してくれているとはいえ、本件に関しては彼女自身のプライベートな部分だ。
面倒を見てくれているからと言って、余りズケズケと入り込んで欲しくないというのが想の勝手な思いだった。
(ま、これに関しちゃ俺自身も部外者なんだけどな)
何となく、結葉への個人的な想いが強すぎて、当事者みたいな気持ちになってしまいがちだけれど、時折自分の立ち位置をしっかり見つめ直しておかないとマズイことになりそうだな、と溜め息を落とした想だ。
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