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会議室の扉を閉めて念のために中から施錠すると、想は手にした封書をじっと見つめた。
(小切手と離婚届……だよな、きっと)
もしかしたらそれプラス、結葉宛の手紙があるかも知れない。
封書に書かれた美麗な文字を見て、想はもう一度小さく吐息を落とした。
御庄偉央という男は、自分とは対極の位置にいるかのような人間だと言うのが想の印象で。
想は文字だってお世辞にも綺麗とは言えないし、何より偉央のようなインテリタイプでもない。
結葉はああいうタイプが好きなんだろうか。
ふとそんなことを思って、心の中にモヤモヤとした気持ちを覚えてしまった想だ。
(結葉、お前、元々は俺のことが好きだったんじゃないのかよ。それが何であんな男と……)
などと、いま考えても仕方のないことを思ってしまって、フルフルと頭を振ると、一旦気持ちをクリアにする。
(馬鹿か、俺は)
いま成すべきことはそれじゃない。
想は作業着の袖ペン差しにいつも差して持ち歩いているカッターナイフを手に取ると、己の中の迷いを切り裂くみたいに封を切った。
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