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「お疲れ様、想ちゃん」
言って、スッと手を差し出して想の手からお弁当箱の入った袋を受け取ったら、今日も綺麗に完食してくれたのか、軽くて嬉しくなる。
「今日の卵焼き、いつもと違ってたな」
しみじみとそんな喜びに浸っていたら、不意に言われて、結葉はドキッとして想を見上げた。
「もしかして……美味しくなかった?」
不安に揺れる瞳で想を見詰めたら「まさか! その逆! すっげぇ美味かった!」とニヤリとされて。
「なんか切り口が鮮やかでふた開けた瞬間、滅茶苦茶ワクワクしたんだけど」
子供みたいに笑う想に、結葉はホッと胸を撫で下ろす。
「だし巻き卵にね、小さく刻んだカニカマと小ネギを入れてみたの」
イメージ的には「茶碗蒸しみたいなお味になったら良いなぁと思って作ったの」と続けたら「茶碗蒸し……」と想が驚いた顔をする。
「想ちゃん、茶碗蒸しが好きだって純子さんがおっしゃってたから」
言ったら「うん。すげぇ好き」とニカッとされた。
さすがにお弁当箱の中に茶碗蒸しを入れるわけにはいかなかったから、そんな感じの味が出せたらいいなと思って作った卵焼きだった。
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